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日本マジック界の底上げと、マジックの文化土壌の実現を。

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こんにちは!そろそろ大阪の気温に危機感を覚え始めている、道産子の滝沢です。

先日、と言ってもだいぶ前になりますが、『声優魂(大塚明夫著、星海社)』という本を読みました。実はそのときにこのコラムを書いていたのですが、他にアップするものがあって何となくそのままになっていたところ、先日プロマジシャンのKilaさんとお話ししたときにこの本の話題で盛り上がったので、良い機会と思いアップします。

ご存じの方もいらっしゃるとおり、著者の大塚明夫氏は有名な声優で、あまりアニメや洋画を見ないという方でも、声はどこかで聞いたことがあるであろう、声優界の大御所です。本の内容を大まかに説明すると、声優に憧れる若者に向けて「声優は生半可な仕事ではないから、目指すのはやめろ」と蕩々と諭している本です。

なぜここでこの本を取り上げたかというと、その内容がマジックにも見事に当てはまる部分が多いから。例えば…

『…「いい声」というのは、確かに「いい刀」なのだろうとも思います。(中略)それは確かにひとつの武器です。よく切れる刀である、ともいえるでしょう。しかし、素人が言い刀を持ってもうまく使えません。逆に、剣術の達人ならば刀が悪くてもうまい戦い方はできる。』(99ページより)

『頭ひとつ出る方法、なんてものは(中略)少なくとも、それは自分の周りの狭い範囲だけを見ていてもわからないことのはずです。アニメを見て、声優雑誌を読んで、アニメ声を出す練習をしていても「声優っぽい何か」の範囲を出ることはできません。ステレオタイプの中で収まっている限り、やはり埋もれていく道しかないのです。』(148ページより)

もちろんマジックの話をしているわけではありませんが、内容をマジックに置き換えてみると、少しドキッとします。また、次のような文章もありました。

『重要でない、モブに近い役をとりあえずミス無しで言い終える。それが惹かれる演技でなくても、「まあいいや、口パクは合わせてくれるから次もそういう役はまかせよう」とは思ってもらえるでしょう。でもそこで一歩踏み込んだ主張をする。他の声優にはできない演技をしようとあがいてみる。そうしたとき、初めて「ん? もうちょい喋らせてみようかな」「違う役のやらせてみようかな」と思われるのです。』(127ページより)
 



私は「マジシャンは生半可な仕事ではないから、目指すのをやめろ」と言いたいわけではありません。むしろ、たくさんの人に表舞台に活躍してもらいたいと思っています。しかし、プロマジシャンをとりまく状況は、明らかに声優よりも厳しいものです。声優は、少なくともマジシャンよりも認知度は高く、スターも現実に出ています。パイも大きいでしょう。日本のマジシャンの中にもスターはいますが、その数はどうしても声優に劣ります。

もしマジシャンとして社会的に活躍したいと思っている人がいるならば、万一にも上記の内容に当てはまっているようではいけないでしょう。将来の選択肢にマジシャンを考えている人は、ぜひこの本を読んでみてください(Amazonなどで購入できます)。趣味の道として楽しむか、プロの道を目指すのか。どちらにせよ、自分が幸福になる道を見つけるヒントは得られると思います。そのうえで…私は一流の力と気概を持ったパフォーマーが出てくることを願っています。

プロマジシャンの世界に置き換えることのできる言葉をもう一つ、最後に引用します。

 

『「声優になる」というのは職業の選択ではありません。
 「生き方の選択」なのです。』(42ページより)