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日本マジック界の底上げと、マジックの文化土壌の実現を。

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今アメリカで放送されているマジック番組に『ペン&テラー:フール・アス』があります。これはペン&テラーの前でマジシャンたちがマジックを演じ、見事に彼らを引っかけることができれば(彼らが秘密を見破れなければ)、トロフィーがもらえるというもの。一見すると見破るか見破らないかを競う対決物のような印象がありますが、毎回演技後に行われるペンのコメントが秀逸で、視聴者が「これは面白い物を見た、知的なものが裏に隠されている」と思えるエンターティメントに仕上がっているのです。

さて、先日この番組にポール・ガートナーが出演しました。彼は『スチール&シルバー第3巻』に収録されている「アンシャッフルド」を演じて見事にトロフィーを獲得したのですが、その演技にはこのマジックを知っているマジシャンが見ても驚く仕掛けが隠されていたのです。

その映像がこちらです。


いや!さすが!
これを考案するまでの秘話がポール・ガートナーのブログにアップされていたので、ご本人の許可を経てご紹介します。全3回に分けてお届けします。

 



今話題のTV番組の一つが、CWネットワークで今年3回目のシーズンを迎える『ペン&テラー:フール・アス』だ。私は今年、そこに出演する栄誉を受けた。私に課せられた仕事は、ペンとテラーを引っかけるということだ…それも彼らがすでに知っているトリックで。

もし私が出演した番組をまだ見ていないのなら、これ以上読み進める前に見ておくことをお勧めする。見てからの方が、このコラムの内容は楽しめるだろう。

さて2月のある日、私は友人であるリー・ターボシックから連絡を受けた。彼はピッツバーグ出身の素晴らしいマジシャンだが、フール・アスに出演することになったと言うのだ。それは喜ばしいことだが問題は、番組側が彼に、私のマジックである「アンシャッフルド」を演じて欲しいと言ってきたということだ。そこでリーは私に使用の許可を得るために電話してきたというわけだ(これを読んでいるマジシャン諸氏へ:これはとてもプロフェッショナルな行為である。アンシャッフルドは発表済みの手順であり、リーがどこで演技しようとも私に許可を得る義務はないが、それでも連絡をくれたのである)。

正直に言って、フール・アスが私のトリックを他の誰かに演じさせようとしたのには少なからず驚いた。私の理解していたところでは、あの番組で大切なのはマジシャンのオリジナリティだと思っていたからだ。もしくは、少なくとも独自のユニークな演出を加えることで、マジック界の不良であるペン&テラーを引っかけられるかを問うという趣旨だと思っていた。リーには少し考えさせてくれと答えてから、番組のプロデューサーを努めているマイケル・クロースに連絡を取り、事情を尋ねることにした。マイクが言うには、エグゼクティブ・プロデューサーたちは私のトリックであるアンシャッフルドを見て気に入り、ぜひ番組に取り入れたいと思ったらしいが、番組の主な視聴者層は18歳から35歳だから演じるマジシャンもその年齢層の人物にしたいということだった。…確かに私がその年齢だったのは、だいぶ過去の話だ。しかし彼は、ペンとテラーを本当にだませるマジシャンを探すのは本当に難しいことだ、とも言った。その域に達するには、長い年月に渡る経験が必要だからだ。つまり番組側は、長い時間に裏打ちされた経験豊富な、しかし若いマジシャンが欲しい、というわけだ…。

幸いなことにマイケルともう一人のプロデューサーであるジョニー・トンプソンがエグゼクティブ・プロデューサーたちに私の映像を見せてくれたらしく、2日後に私自身への出演依頼が来た。撮影は4月前半に決まった。リーは事情を理解してくれ、寛大に受け止めてくれた。我々はいま彼を次のシーズンのフール・アスに出すためのアイデアを、一緒に作っている。

しかし問題はここからなのだ。アンシャッフルドは面白いトリックだし、私もこれを演じるのは大好きだが、しかしこれでは確実にペン&テラーを引っかけられないのが分かっていた。

なぜ分かるのかって?話は40年以上前にさかのぼる。

私がペンとテラーに出会ったのは41年前の1975年、アトランタでだった。我々は全員キャリアをスタートさせたばかりの若いマジシャンだった。当時彼らは「アスパラガス・バリー・カルチャラル・ソサイエティ」と名乗っており、もう一人のミュージシャンと合わせた三人で活動していた。彼らはそのとき教会の地下にあった小さな劇場で演じており、私は初めてのトレードショーに出演したときだった。彼らのショーを観に行った後、3人とコーヒー・ショップでトリックの見せ合いをした。そのとき演じたトリックの一つがアンシャッフルドで、彼らは非常に驚いてくれた。それから25年ほどして、私はペンからの一通のメールを受け取った。私の本「スチール&シルバー」を買いたいというのだ。アンシャッフルドは彼がそれまでに見たトリックの中でも最高のものの一つであり、それを覚えたいから、ということだった。その頃には彼らはすでに有名になっていたから、実はそのときのメールはまだ保存してある。

つまり、フール・アスに出演するということは、彼らが秘密を知っているトリックで引っかけなければならない、ということなのだ。何ということだろう…これは大変な試練だが、しかし私は試練が大好きなのだ。

それから10日間、すでに行くのが決まっていた休暇先のカリフォルニアのビーチで、あれをどう変えれば引っかけられるかということばかりを考えていた。そしてデイナ・ポイントのビーチに横たわって波の音を聞いているときに、あるアイデアが浮かんだ。演技は原案通りに演じるが、最後の5秒間で誰もがはっとするような新しいエンディングを付け加える、というものだ。

あの番組に出てペンとテラーを引っかけたマジシャンはたいてい、現象からマジシャンが予想するのとは少し違った手法を使うような工夫をしている、ということを私は知っていた。あの二人が間違った予想をした時点で、引っかけたことになるからだ。しかし私はそうはしたくなかった。違う手法だと思わせたり、意図的に別の方向に誘導したりはしたくなかったのだ。手法を変えて引っかけるのではなく、新しい現象で引っかけたいと思った。彼らがこれを1975年にアトランタのコーヒー・ショップで初めて見たときと同じように、徹底的に引っかけたかったのだ。それがゴールだ。そして、それができそうなアイデアも思いついた。

休暇の間中、閃いたアイデアがうまくいくか確信が持てないまま、頭の中で考え得る限りの解決法を探った。実際に道具を手に取って試してみるまでには、ほぼ二週間待たなければならなかった。今は休暇に来ているのであり、仕事をしているわけではないからだ…。しかし妻のキャサリンが案じたとおり、頭の中は常にアイデアを検討し続け、可能性を探り続けていた。それでも私はできるかぎりカリフォルニアでの時間を楽しんではいた。

帰りの飛行機に乗る前に、新しいエンディングに必要と思われるだけの(少なくとも研究は始められるだけの)材料をインターネットで注文しておいた。ボストンへ帰ったときに、すぐ取りかかれるようにするためだ。

ボストンへ帰ったのは月曜日の夜だったが、新しいアイデアの動画を金曜日までに送るとマイケル・クロースに約束してしまっていた。つまり、実際にアイデアを実現させるまで4日しかなかったわけだ。その4日間は、毎日18時間かけて手順を作り、試し、またやり直すことに専念した。5秒間の現象のためにである。問題は他にもあった。この新しい現象を、すでに43年間演じてきた既存のトリックに違和感なく繋げなくてはならないのだ。一番初めに作った試作品はなんとか今後の道筋が見える仕上がりだったが、満足行くように機能させるにはさらに4つの試作品を作ることになった。

マジックの手順を考えていると、頭の中で映像化できたアイデアが現実の世界では実現不可能だった、ということはよくある。思い描いたとおりに実現させるには、本物の魔法が必要なのだ。我々のしていることが「マジック」と呼ばれる所以だ。

しかし今回は、正反対のことが起きた。カリフォルニアのビーチで思い描いた物そのものが、いま私の手の中にあり、これを鏡やビデオの前で演じると…驚いたことに、うまく機能するのだ!しかも、すばらしく満足のいく形で。

デモ映像をマイケル・クロースに送ってからしばらくして、ようやく彼からの返事が届いた。「これは無茶苦茶すごいじゃないか。本番でも使えると思うし、ペンも、ひいては見ているマジシャン全員を引っかけられると思う」

やれやれだ!二週間の検討と四日間の実作業を経て、何とか形にはなってきたようだ。しかしこれを人に見せて試してみる前に、手順の形に仕上げ、さらに繰り返し繰り返しとことん練習しなければならない。撮影は4月12日にラスベガスで行う予定だったので、ペン&テラーを引っかけるこのエンディングを形にするまできっかり二週間残っていた。その期間のスケジュールに空きがあったのは幸運だった。さもなくば実現は無理だっただろう。
 



いかがでしたでしょうか?
続きは以下からお読み頂けます。

ポール・ガートナーがペン&テラーを騙すまで 第2回

出典:www.paulgertnermagic.com

 


スチール&シルバー 第3巻