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日本マジック界の底上げと、マジックの文化土壌の実現を。

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いきなり第2巻のお話です。
ポール・ガートナーのこのシリーズは全部で4巻ありすべて日本語字幕版を発売しておりますが、手がけたかった理由はとにかくこの2巻を翻訳したかったから。この2巻、大好きなんです。マジックって凄い!と思った原体験はいくつかありますが、ここで紹介されている「リング・オン・アワーグラス」が私にとってはまさにそんな手順の1つだったからです。

観客の指輪が砂時計のくびれに入ってしまう、強い不可能性とシンボリックな小道具のチョイス。しかもこの砂時計、演技の初めからずっとテーブル上に出したままなのに…という「いつのまにか」系の構成。ああ、ほれぼれする!


こんな状態で初めからテーブルに置かれている砂時計に…


借りた指輪がこんな風に入ってしまう(本当に入っています)。ああ美しい…!

私はこの「いつのまにか」系が大好きなのです。
観客のカードがいつのまにかグラスの下に移動しているカード・アンダー・ザ・グラスやトミー・ワンダーの「2カップ・ルーティン」(「ビジョンズ・オブ・ワンダー 第1巻」に収録)、コインが何度も塩瓶の下に移動するアルバート・ゴッシュマンの「コインとソルトシェイカー」(「アルバート・ゴッシュマン・ライブ」収録)、観客のカードがいつの間にか塩瓶の下に移動したりおでこに貼り付けられるマイケル・クロースの「おでこと塩瓶」(「シグネチャー・エフェクト」収録)、細かいところで言えばマイケル・アマーのカップ&ボールで3つ目のボールが出現するところ(目の前に置いてあったカップの上にいつのまにか置かれている。「コンプリート・カップ&ボール第2巻」収録)などがそうですね。手先の技術だけを見ると難しいことはまったくしていず(単に入れるだけ)、また行為自体は観客の目の前で堂々とやっている。それなのに、気づかない。まさにマジックの本質であるミスディレクション全開の構成であり、こういうのに引っかかると本当にマジックが好きで良かった、と思ってしまいます。

またこのタイトルは、初めて電話でライセンス交渉をしたDVDでもあります。電話をかけるとスタッフではなくいきなりポール・ガートナー氏本人が出られて、心の準備ができていなかった私は電話口であわわわわ…となったのを覚えています。今にして思えばそんなしどろもどろのオファーでよく翻訳を許可してくれたものですが…(汗)。ポール・ガートナー氏に感謝。

この演技、実は一度だけマジックバーのイベントで演じたことがあります。最後に砂時計を割って指輪を外すのですが、ついにこのマジックを演じられた感激と、頭をよぎったそれまでの準備の大変さとでハンマーを持つ手が震え、結局「指輪は後でお返しします」と言って砂時計を割らずにそのまま演技を終えたのでした…(情けない!)。

我々が翻訳するDVDの選定基準は様々ですが、この作品を翻訳させてもらった基準は『誰が何と言おうともプライドにかけて「これは面白い!」と思ったもの』です。頭から終わりまで私個人の好み大全開のチョイスでしたが、マジックに関わる者としてこれを翻訳させてもらったことはとても幸せなことでした。
 

   『スチール&シルバー第2巻