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日本マジック界の底上げと、マジックの文化土壌の実現を。

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ティム・エリスによる「FISMFで入賞するには」という記事の翻訳。第1話では、FISMのコンテストではどのような審査項目があるのかご紹介しました。ここからはいよいよ、6つの審査項目の中で一番狙うべき項目は何か?に踏み込んで話をしていきます。


私が最初に参加したFISMは1991年のローザンヌ大会(スイス)でしたが、コンテスト入賞を狙ったアクトを作っていきました。エントリーしたのはクロースアップ部門でしたが、アクトは2つのパートからなっており、前半はかなり挑戦的で難しいテクニックを満載したコインの手順、後半は小さな白黒テレビに映した自分と絡みながら行うバカバカしいスタイルのカードマジックでした。

これを地元メルボルンの仲間たちに見せたところ、みんな気に入ってくれましたがただ一人、私の先生であったリンジー・リーチェルだけは違ったのです。彼は、後半は良いが前半のコインは“話にならん”、と言ったのです。当然、私は気を悪くしました。前半部分こそが、私のテクニシャンぶりをアピールできる大切な部分だったからです。実際、ほとんどの仲間たちは私のコイン・テクニックのことばかり褒めてくれていました。結局アクトはそのままの形で演じることにしました。

一方で、その頃はちょうどジョークとして作ったシックス・カード・ラップ(The Six Card Rap)のアクトが出来上がった時期でした。これを初めて本番で演じた日、たまたまピーター・ラヴィーンがそれを見ていたのですが、彼が、この演技をコンテストにかけたらどうだ、と言ったのです。私はショックでした。単なるセルフ・ワーキングのマジックですよ!しかし彼のアドバイスを受けて、私はジェネラル・マジック部門でこれをやることにしたのです。

本番当日、クロースアップ部門で演じたコインとカードの手順は失敗無く演じられましたが、人々から聞く言葉は「白黒テレビのオリジナリティと面白さは素晴らしいが、コインがそれをダメにしてしまっている」というものでした。その一方でシックス・カード・ラップは、失格に決まっていると自分でも思っていたにもかかわらず(なぜなら規定ではマジックを2つ以上やる必要があり、時間も3分以上でなければならなかったから)、この演技のためにわざわざ審査員特別賞が作られたほどの評価を受けたのです。

さて、大体どういうことが言いたいのか、分かってきたと思います。「実際の現場」と同じように、FISMのコンテストでも人々の記憶に残って評価を受けるのは、テクニックよりもオリジナリティやエンターティメント性なのです。コンテストの客席で演技を見ているマジシャンたちも、実際には一般の人よりほんの少しマジックの知識があるだけで、観客には違いありません。一般の人たちよりもテクニックについて共感はしてくれますが、後々まで記憶に残ったり楽しんだりする演技は、オリジナリティやエンターティメント性のあるものなのです。

これは私見ですが、仮に最も素晴らしい「魔法らしさ」を見せてくれた人でも、それだけで入賞は難しいでしょう。「技術/ハンドリング」で最高点を取ったとしても同じことです。高得点が順位に結びつくのは「オリジナリティ」と「エンターティメント性」です。

もちろん、上位のアクトはすべての要素で高得点を取りますが、ここで言いたいのはコンテストで入賞を目指すならば、「まず」その2つの項目に集中すべきということです。そのアクトに難しい技法が必要なら、それに応じた審査がされます。(「技術/ハンドリング」の採点基準は「この現象を起こすのに必要な技術レベルがあるかどうか」です。シックス・カード・ラップに必要な”技術”は、「カードを示すだけ」というあまり難しくないものでした。しかしコインのアクトではかなり難しいことをやったおかげでもしかしたら幾分かポイントは稼げたかも知れませんが、完璧にはできなかったので失点の方が多かったはずです。ヘンリー・エバンスを見てください。彼がカード・マジック部門で優勝したとき、誰もが彼を凄いテクニシャンと思っていました。しかし実際はそのほとんどがセルフ・ワーキングだったのです…。彼の本当のテクニックは手法を考える段階で発揮されており、出来上がったアクトは我々を見事にだましたのです。

従って、自分のアクトを作るときはまずオリジナリティに注力してください。他人がやっていることをよく見て、誰かがやったことはしないようにするのです。マジックの事を何も知らず、やり始めたころに思い描いていた一番壮大な夢のことを思い出してください。手法や現実性なんて気にせず、どんなマジックだったら「自分が」ひっくり返るだろうか思い巡らすのです。あなたが作り出すべきものは「それ」です。

あなたのクリエイティビティを鍛えるための現実的な方法として、マジック・スポーツが役立ちます(訳注:ティム・エリスが考案した、ゲームを通してクリエイティビティを刺激する様々なエクササイズ。ゲームの種類やルールなどはこちら で読むことができます。ただし英語)。マジックの仲間たちとここのゲームをいくつかやったり、一人でもできるエクササイズを試してみてください。いくつかのゲームは私のDVD「エリス・イン・ワンダーランド」の中に、実際のFISMの映像として収録しています。これが今日の宿題です。あなた自身の夢に溢れた新しいアクトを想像してください。これをするための明確なガイドラインはありませんが、してはいけないことは挙げられます。

  • 決して優秀なアクトを少し変えただけのコピーはしないこと。
  • 決して優秀なアクトを丸ごとコピーしないこと。
  • 決してショップで買ったものやレクチャーで教わったルーティンを使わないこと。
  • 決して単一の道具だけをテーマとしないこと(例えばバービー人形が増える/色が変わる/最後に人間大になる、など)。
  • 決して技術の披露でしかないアクトにしないこと。
  • 決して手伝ってくれた観客やアシスタントをないがしろにして自分だけが凄く見えるアクトにはしないこと。
  • 決して動物を傷つけたり、傷つけたように見える演技はしないこと。
  • 決して不快な言葉遣いはしないこと。適切な文脈の上でのことであっても、神経質な審査員がいた場合、点数を減らされることになります。

夢を現実の世界に具体化させる方法は考える人の数だけあり、これと言った唯一の方法はありません。

マジック・マガジンでジョン・カーニーが書いていたことですが、彼が新しいショーを考えるときにまず最初にすることはポスターをデザインすることだそうです。できあがったポスターを眺めて、この絵と雰囲気を満たす演技とはどんなものだろうかと考えるのです。

どんなマジックだったら「あなたを打ちのめ」しますか?

他のマジシャンによって考案された手順やマジック、商品を気にするのはやめて、代わりに自分の創造力を自由に解き放ちましょう。さて、そんな素晴らしいアクトをイメージすることができたら、次はどうやってそれを実現すればいいのでしょうか?


次回はその方法について書きます。


「シックス・カード・ラップ」(注釈: これはMCとして幕間で演技した映像ですが、冒頭のMC部分も演技の一部なので、飛ばさずに観ることをお勧めします。ただし英語のみ)。

第1話 FISM審査員が語る!FISM入賞の秘訣

第3話 FISM審査員が語る!FISM入賞の秘訣