彼の世界に触れるとき、今まで知っていると思っていたマジックの世界がまったく異なる様相を見せる。
膨大なマジックの情報が簡単に手に入るようになった現在、多くのマジシャンたちが定型化されたイメージにとらわれたマジックを演じています。趣味としてはそれでよくとも、一表現者として、一アーティストとしてはどうか。ありふれたイメージの中に埋没することは、「その人が演じる意味」や「その人だからこその良さ」を減じることにはならないか。
北原禎人の世界は、マジシャン一人一人にその問いを力尽くで突きつけてきます。
異端であるがゆえの恐ろしさと純粋さ。野獣のような荒々しさと研ぎ澄まされたナイフの美しさ。彼の世界に触れるとき、今まで知っていると思っていたマジックの世界がまったく異なる様相を見せます。今まで慣れ親しんでいた友人が、突然人が変わったような振る舞いを始める、そんな感覚です。
そんな見知った道具を使った、しかし全く新しく感じられるメンタル・マジックの他に、今回は多くのページを割いて「感覚で解決するマジック」をいくつか解説しています。観客の心理や動きを読んで、それに合わせてこちらの行動を柔軟に変えて成立させていくような、100%できる保証が無いのに上手な人が演じると成立してしまうマジック。一見、選ばれた人にしかできないようなこの手法を、筋道を立てて理論的に解説します。
彼の世界、決して中級者にはお勧めしません。自分の価値観をしっかり持っている方は、気を引き締めて触れてみて下さい。自分の感性と彼の世界が交差する点が1つでもあれば、そこを起点としてきっと新しい可能性の広がりを感じることができるでしょう。
4/5点 ちー
正直なところ、レパートリーを増やすのには向いていないかもしれません。北原さんのキャラクターがあってこそ、作品として完成していると感じるものもあったためです。ですが、作品を作るうえで北原さんが考えていること、どのような意図で作っているかということを読めるというのは大きな価値があると思います。文章は難解ですが、その端々から得るものはあると思います。
5/5点 Benjamin
本作品では、「感覚で解決するマジック」をテーマにしていますが、それがすべての作品を通じて叶えられているわけではありません。 しかし、メンタル作品に刺激が欲しい方には北原禎人という人間観は適していると思います。 よく北原さんの作品はクセのある文言によって分かりにくい、抽象的と言われますが、それこそが私に刺激を与える一因となっており、彼の見ている世界を覗き見できる大胆な作品です。
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