第5章 ギミックを使ってみる

ギミックとは、仕掛けのある道具のこと。
例えば一見普通のカードに見えるけれども、何らかの仕掛けがあるというものです。様々な道具に向けたギミックが存在しますが、ここではデックとコインを例に取ります。

レギュラーのデックやコインのマジックにある程度なれてくると、その奥深さに驚かれると同時に、どうしても避けがたい限界も感じ始めます。使っているものは仕掛けのないものであるだけに、これだけでは絶対に実現できないこと、というものがどうしてもあるからです。

レギュラーで行うマジックが悪いわけではありません。それだけで行える傑作マジックだって星の数ほどあります。しかし特定の場面で、こうしたいのにどうしてもできない、という場面が出てくるのです。

例えば「観客の引いたカードを一瞬でデックの中から取り出す」マジックをしたい場合。
現象だけならば、レギュラーデックでも十分行えます。しかし例えば常にブレイクを保持する必要があったり、特定のテクニックを行うために常に手に持っていなければならない、などの制限があったりします。演出上の理由で「テーブルにきれいにそろえて置いたデックから一瞬で抜き出したい」としても、それは(基本的には)無理なのです。

しかしギミックデックを使えば、これが簡単に実現できます。

左手にコインを2枚握りますが、マジシャンは「手の甲」から1枚抜き出してしまう。左手を開けると、コインは1枚になっている…。これも難しいテクニックや怪しい動きなく、「2枚握る部分を最後までしっかり確認してもらおう」と思えば、レギュラーでは不可能です。しかし、これもギミックを使えばいとも簡単に実現できてしまいます。

プロがマジックをする場合、レギュラーを使う技術を十分にマスターしたうえでギミックを組み込んできたりするので、クリーンで本当に不思議な現象になったりするわけです。

レギュラーのマジックにある程度慣れ、一段上の不思議を目指したい方はぜひギミックの導入を考えてみてください。マジックの世界がまた大きく広がると思います。

スクリプト・マヌーヴァでも、ギミックの使用を前提としたマジックを解説しているものがいくつもあります。

イージー・トゥ・マスター・カード・ミラクルズ第2巻

確かにそこにあったはずのエースが消えて、別のところに移動している…。レギュラーでは実現不可能な不思議を生み出す傑作マジック「マクドナルド・エーセス」はギミックを使ったカードマジックの代表格です。必要なギミックカードも同梱しています。

コインがあやなす奇譚な物語

コインマジックをされている方でも、この人の演技は「あり得ない!」と叫んでしまうものばかり。紹介ページには実演クリップも多数ありますので、ぜひ一度見てみてください!