リチャード・オスタリンド オンラインレクチャー レビュー(キシタカ様)

先日行いましたオンラインレクチャーのレビューを頂きましたので、こちらに掲載させていただきます。投稿していただいたキシタカ様、ありがとうございます!

イベント:リチャード・オスタリンド オンラインレクチャー
日時:2022年4月9日
投稿者:キシタカ様(Twitter:@Kishitaka_Magic)

 去る4月9日、メンタル・マジックの巨匠リチャード・オスタリンド師の日本初となるレクチャーにオンラインで参加する機会に恵まれました。
 主催は、マジック関連書籍・DVDの日本語訳でプロ・アマ問わず多くの日本人マジシャンがお世話になっているスクリプト・マヌーヴァ社。

 僕はメンタル・マジックはほぼ演じないのですが、
「本当に不思議で、しかも楽しい」
「明るく笑える雰囲気のメンタル・マジック」
 と聞いて俄然興味を惹かれ、受講を決めました。

 事前に告知されたプログラム
・センターテアとブレイクスルー・カードシステムの深掘り
・最新のメンタル・マジック
・「どのようにメンタルマジックをエンターテイメントにするか」
・質疑応答
 に沿って感想を書いて行こうと思ったのですが、センターテアとブレイクスルー・カードシステムに関しては、裏側に触れずに良さを表現するのは難しいですね…

【センターテア】

 師は普段からセンターテアに適したサイズのメモ帳をポケットや鞄に入れているそうですが、
「オン・オフ問わずいつでも演じる」
 とのこと。
 イベント会場などの場合、ショーでは勿論のこと歓談の時にも相手が変わる度に演じ、1日でメモ帳を4〜5冊消費したこともあると言うことですから、それこそ数千回は演じて来られたまさしく“現場プルーフ”なトリックですよね。

 その様な師からの
「トリックの都合上、観客に指示を出す際の理由付け」についての質問に対する
「これまで同様の質問を多く受けて来ましたが、その様な場合の理由付けは特に必要ないと考えています。
 演技が滞りなく進んでいれば、観客に疑問を持たれることはありません。」
 と言う回答には、説得力がありました。
 往々にして、最近は理論偏重の傾向があり実際に演じる(さらには練習する)前から先回りした予防線を考えてしまいがちですが、そう言うことは理屈よりも「まずやってみること」が大事なのかも知れませんね。

【ブレイクスルー・カードシステム】

 システムの詳細と、さまざまな利用法が紹介されました。

 スタック・デックに馴染みのない自分にはシステムを使いこなす自信がありませんが、ジャンボ・カードを使った、観客が抜き取った数枚のカードを読み取ってしまう『カード・コーリング』は大勢の観客に対しても演じることができ、大上段に構えたいかにも「メンタルマジック!」と言う雰囲気を作らずとも演じられるため、システムを身に付けることができれば、比較的(シチュエーションを選ばないと言う意味で)採り入れ易いトリックなのではないかと感じました。

 上記2つに関して唯一残念だったのは、今回のレクチャーの形式上、実際の観客(ないし観客役)を相手にした実演パートが無かったこと。
「いま解説された手順を、頭から流れで見せていただけますか?」
 と言うリクエストがありましたが、おそらく演技の中での台詞とハンドリングの実際のタイミングなどを見たかったのではないかなと…。

【最新のメンタル・マジック】

 こちらに関しては、特に「今からレクチャーするのは新作です」と言うパートは無かった様に思うのですが、記憶違いでしたら申し訳ありません。
 ただ、名刺を使った“簡易版センターテア”とも言うべきトリックはよりフットワークが軽く演じられるため、今後ショーでセンターテアを演じてみたい人が経験を積むのに適しているのではないかと思いました。

 また、小品トリックといった雰囲気で実演解説があったZIPPOを使ったサイコキネシスのデモンストレーションは、火を使える環境ならば重宝しそうですね。

【「どのようにメンタルマジックをエンターテイメントにするか」および質疑応答】

 一人一人の質問になるべく丁寧に答えたいと言うオスタリンド師の紳士で真摯な姿勢が伝わって来ました。
 3時間の予定が90分近く延長したのも、その表れだと思います。

「メンタル・マジックとコメディの相性」についての質問に答える際、「ジョークを交えたトークで場を和ませるタイミング」の実例としてスプーン曲げをサラッと演じられたのですが、それ単体でレクチャーを受けたいと思ったのは僕だけではない筈。

※ちなみに師のスプーン・ペンディングは、スクリプト・マヌーヴァ【マインド・ミステリーズ 日本語字幕版 第3巻】に収録されています。


 最後に、質疑応答の中で1番印象に残ったお話を紹介して、僕の拙い感想文の筆を置きたいと思います。

「あなたが(メンタル)マジックを演じるにあたり、特異なキャラクターを作る必要はありません。
 現在、地球上には78億人が暮らしており、それぞれ個性を持っています。
 そこに1つ新たなキャラクターを足したところで、どれ程の意味があるでしょうか。
 あなたはあなたのままでいるべきです。」

リチャード・オスタリンド